元 ハイスペック()ぼっちの回顧録

かつてハイスペック()ぼっちを自称していた文系大学生のブログです。「常に観測者でありたい」

さあ、今こそ天使の告発に答えよう

君は知るだろう。

天使との戦いが、勝ち目のない袋小路などではないことを。

 

どうも。お久しぶりです。

前回の記事で、『物語の物語』について触れました。今回も同じものを扱います。同書を読んでいなくても理解できる内容にしたつもりです。

えっ、「ぼっち道」だって?勿論忘れてないよ。しかし、続きはだいぶ先になりそうです。

 

 

最初に、どうしても書きたいので一つだけ書かせてください。

Heaven's Feel良かった!!!

流石はufotableです。映画館なのに特に気になところがない神作画

ストーリーについては、「あの状況で左腕だけもげるのおかしくね?!」とか「凛達が同じ屋根の下暮らしてるところでよくできたね(ニッコリ」(しかもどう見てもバレてた)とかありますが、とにかく良かったです。このままtrue endに行くしかない。

spring songが終わったら、満を持してマブラヴのアニメ化だね!

ufotableさん本当にお願いします。

 

 

ここからが本題。

『物語の物語』には、「天使の告発*1と呼ばれるものが登場します。

「天使の告発」とは、端的に言えば「人類こそが悪である」というものです。

2巻まででこの問題については一区切りついたようなのですが、結局のところ『物語の物語』においては、天使の告発に正面から向き合った答えというものは提示されていません*2正面から答えるのは不可能という結論に至りました。

3巻は未読なのですが、同書でこれ以上の追求がなされることはないでしょう。
このままだと少し収まりが悪い……のですが、実は、天使の告発への正面からの答えは存在するのです!

 

本稿では、『物語の物語』を元に「天使の告発」が登場するに至った背景やそれに対する物語の答えを記し、そして同書には記されていない(であろう)さらなる答えを提示します。

 

 

 

 

その1 こうして、天使の告発は誕生した

まず、戦後日本において、物語(アニメや漫画など)は「竜退治」を描いてきました。つまり、正義の味方が悪を倒すという、よくある勧善懲悪ものです。

敵味方共に強さのインフレを続ける中で、悪の理論(なぜ悪を行うのか)も強化されていきます。

そしてついに、「究極の悪」が敵として立ちはだかります。それは、天使です。

 

「なぜ善の象徴たる天使が究極の悪なのか」という問題ですが、これは後者の悪が人間から見た基準によるものだからです。*3

↑この視点は後で重要な意味を持ってくるので、覚えておいてください。

「祭壇」などのこの辺りの話は、読んでいてちょっとした感動がありました。興味のある人は是非一読を。通信販売も始めたっぽいです。

 

さて、こうして登場した天使は、自分を倒しにきた主人公に「人類こそ悪じゃん」と言い放ちます。

人には悪の心がありますからね。実際に、戦争とか環境破壊とかやりたい放題やってるし。

正義を気取っていた人類の中にこそ、悪が潜んでいたのです。

最終的には「人類こそが悪だから、人類滅ぼすわ」という話になります。

 

以上が、天使の告発に至る経緯です。

詳しく知りたい人は、『物語の物語』をお読みください。

 

 

その2 天使の告発の問題

数多の敵を倒してきた主人公ですが、天使は倒せません。

その理由は、天使の物理的な強さではありません。『物語の物語2巻』前書きで海燕氏が述べている通りです。

天使の言葉にまさに「理」があるから、そう、「正義」がそちら側にあるからこそ、無敵のヒーローもかれらには敵わないのです。

よって、単にパワーで天使を倒しただけでは、天使の告発に答えたことにはなりません。むしろ、人類の悪性を証明してしまっています。

天使の告発に答えるには、基本的に「人類は悪ではない」ということを示す必要があります。

しかし、前述の通り「人類に悪が存在する」ことは事実です。天使の言っていることは正しいのです。

こうして、天使の告発は「決して答えられないもの」となります。*4

 

 

 その3 物語の答え

『物語の物語』では、天使の告発に対する作品群の答えとして主に以下の4つが挙げられています。

 

①パワープレイ

「俺は人類を信じるんだ!」と言って天使をぶっ倒します。いわゆる脳筋です。

しかし先に述べた通り、これは天使の主張を裏付けるだけです。

 

②猶予をもらう
「人間には善い奴もいるし、今後出てくるかもしれないから、とりあえず許してね!」と言って猶予を貰います。

しかし、人類に善い奴がいたからと言って、人類全てが善であるわけではありません。それに、結局は先延ばしにしただけです。

 

③付き合わない(『風の谷のナウシカ』『寄生獣』)

前回の記事でも書きました。「べつにいいじゃん!(超訳)」ってやつです。「人類が善とか悪とか、滅びるべきとか、そんなのどうでもいいじゃん」ということです。

人類は特別な存在じゃないし、そんなこと考える必要ないよ、と。その上で、取り敢えず天使は倒すのですが。

一応書いておきますが、これは①とは違います。

①は、「人類を信じる!」という熱いハートでもって天使を倒しました。一方③は、「天使が何か言ってるけど取り敢えず邪魔」的な感じで天使を倒します。君勝手に熱くなってるけど邪魔なんだよね、という冷めたハートで倒すんです。

つまり、「天使の告発には付き合わなくてよい」というのが答えです。
でも、これって天使の告発に答えてないよね。

ということで、④にいきます。


④人類は善なんだ!(富野作品群など)

4つの中で、唯一天使の告発に正面から向き合ったものです。これらは、「人類が善である」ことを証明しようとします。つまり、人類が戦争をしなくなればいいんです。

これには、2つのルートがあります。(1)個の抹殺と(2)進化です。

(1)個の抹殺

そもそも何故争いが起こるのかといえば、それは人がそれぞれ違うからです。大きなくくりで見ても、人種や宗教など違いがあるからこそ、争いが起きるんです。

ならば、答えは簡単ですね。みんな同じにしちゃえばいいじゃん!ということです。人類補完計画です。

しかし、これは基本的に受け入れられません。個性こそが人間の良いところみたいな風潮あるし。個の抹殺は、人間であることを自ら辞めるようなものです。

よって、このルートは駄目でした。

(2)進化
もう一つのルートが、人類を新次元に到達させるというものです。人がそれぞれ違っても、互いに分かり合えれば良いんです。ニュータイプです。
しかし、実際にその新次元を描くことは不可能でした。それが分かってたら、今頃世界から戦争は無くなっています。

ということで、(1)(2)いずれも結局人類が善であることは示せませんでした。

 

以上、①〜④まで見てきましたが、天使の告発に正面から答えられたものはありませんでした。

これでは、天使の告発に答えることは不可能であるようにも思われます。しかし、そんなことはありません!

 

 

その4 問題の整理

答えを示す前に、「正面から答える」とはどういうことか、整理しておきましょう。

 

まず、「天使の告発=人類こそ悪ではないか」に正面から向き合う答えは、理論上2つしかありえません。
・人類は悪である
・人類は悪ではない=人類は善である*5

の2つです。

つまり、yesかnoで択一的に答えられる(べき)ものです。「善でも悪でもない」や「答えない」という選択肢は基本的になしです。

 

 

その5 本当の問題の所在

実は、天使の告発に正面から答える方法、それも意外と単純な方法が存在します。

先程も書いたように、天使の告発の二択については既に答えが出ています。つまり、(天使の善悪で判断すれば)「人類は悪である」のです。

それならば、答えは簡単です。

「仰る通り人類こそが悪です」と言って素直に滅ぼされるか、「うん、悪だから天使も滅ぼす」というのが、最も論理的にスッキリした答えでしょう。あまりの潔さに、天使も言葉を失うはずです。

特に後者であれば、無事人類も生き残れます。ハッピーエンドです。

 

しかし、この答えで納得する人は(ほとんど)いないでしょう。
本当の問題は、「人類が悪だ」と認められないことにあるからです。
認めてしまえば、これまでの人類の行い(竜退治)を全否定することになりますからね。正直、それでいいと思いますが。

 

その6 裏ルート:天使の告発を破壊する

 さて、人類が自らを悪と認められないことについてはいいとしましょう。ここで、考えてほしいことがあります。

そもそも、天使は善なのか。

 

「究極の悪」とか言っておいて何言ってるんだ?と思うかもしれませんが、これは重要な問題です。

天使が悪である人類を糾弾するのなら、彼等は自身を善と捉えているはずです。そうでなければ、とっとと自滅しろって話ですから。

そして、天使の主張は「争いをやめないことが悪」というものです。

ならば、君達に問いたい。「君達こそ悪なんじゃないか」と。

最早、人類が悪であることは否定できない、と言っても過言ではないでしょう。善性を示そうとした結果袋小路に陥ったのは、LD氏の述べている通りです。

しかし、人類が悪であるからと言って、天使が善であることまでもが否定できないわけではない。ならば、全く同じ質問を返してやればよいのです。

そして、人類が悪だとして、それは天使が人類を滅ぼしてよいことにはなりません。つまり、「滅ぼす(=争いを生む)」という行為自体が悪である以上、天使が善であるためには、彼等に「滅ぼす」という行為は許されないのです。*6

そこで、こう言ってあげましょう。

「我々は悪かもしれないが、それなら貴方達が我々を善に変えてくれ」と。天使が善であるなら、悪を無くすためにはそうするしかありませんから。勿論、争いを使わずに。しかし、それは(多分)無理です。

あとは「我々を滅ぼそうとするなら、貴方達もまた悪だ」と告げれば、天使は人類と同じ立場に陥ります。
もし天使がそれを認められないというのなら、「よろしい ならば戦争だ」という話です。そして、人類は天使をも倒す力を持っている(はず)。
最早、どこにも善なんて存在しません。多分、最初からそれが真実だったのでしょう。

 

本当に究極の善が存在するなら、それはあらゆる存在を許容しなければならない。
これは、これまでの人類の行いを否定することに近いですが、結局は「悪でも生きていていいではないか」ということです。そして、③に割と近い。

正直、これをアニメなどのストーリーに持ち込むのは無理でしょうね。主人公がそんな理詰めで行っても需要なさそうだし。絵としても映えない。

 

 

その7 そして紡がれるもう一つのルート

さて、上で示した裏ルートは、天使の告発そのものを解体してしまいました。そしてこれも、結局のところ天使の問いに答えたわけではありません。 

最後に、「人類が善である」ことを示すルートを提示しましょう。

 

既に気付いていると思いますが、ここまで善悪を語る際に、時々天使視点と人間視点を区別してきました。そして、これこそが答えです。


「お前たちの善は間違っている」と。
必殺、リフレーミング!的な。

天使にとって、「争いをやめないことが悪」でした。つまり、「争わないことが善」です。

それに対して、人類が提示すべきは「争うこと自体が善なんだ!」ということです。

これは、なにも殺しまくれと言っているわけではありません。

圧倒的な生の肯定なんです!

人類が天使を倒すのは、人類が生き残るためです。

生きるために争う。生きるという目的によって、争いすらも善となる。人間かどうかなんて関係ない。ただ命ゆえに尊い。そういうことです。

天使の善は、それはそれで結構です。人類が提示する善は、彼等の善を排除するものではありません。圧倒的な生の肯定は、天使の行いすらも正当化するでしょう。

こうなってしまえば、人類と天使の戦いは善vs. 善の戦いです。人類が善である以上、もう迷うことなどありません。降りかかる火の粉を払うことこそが善なのだから、あとは天使を倒すだけです。

「これが俺の…祝福だ!」的な感じですね。

このルートであれば、これまでの人類の行いを否定することもありません。結局人間が竜退治でやってきたことって、人類の障害を排除することですからね。論理的な一貫性も取れています。

 

 

さて、このルートは僕のオリジナルというわけではありません。③も若干近い部分はありますし。

何より、これと似たことを言っている作品があります。

それは、KeyのPCゲームRewriteです。

おっ◯いエンドなるふざけたエンディングがありますが非18禁です。2016年にアニメ化もされましたね。(勿論他のルートが)

 

この作品、麻枝准がシナリオに関わっていません。そのせいなのか、key作品の中では殆ど話題にならない気もします。毛色が違うし黒歴史扱いされてるかも。アニメも評判悪かった気がするし。

しかし、なかなかの意欲作だと思います。ルート毎に見れば言いたいこともありますが、全体として見れば良作と言って全く問題ないでしょう。プレイした時は、おおーっ!って思った記憶がある。
それにしても、篝ちゃんとかどうなのかと思いますけどね。まあギャグとシリアスのバランスをとったということなのか。

なんとなくマブラヴ意識してる感じがあって、寡黙な幼女だと社霞のイメージがありますし。

 

Rewrite』そのものの評価はさておき、本作で示されているのが、前述の「圧倒的な生の肯定」です。

詳しい内容は他のサイトを参考にしていただければと思いますが、軽く説明しておきます。多少間違いがあるかもしれません。それから、盛大にネタバレしてます。

とりあえず何となく知りたい人は、オーラスエンディングとして使用されている「CANOE」という歌を聴いてみてください。

 

 

Rewrite』では、篝という地球の化身が人類に審判を下すために現れます。

この審判で「良い記憶」を篝に見せないと人類は滅んでしまうのですが、「良い記憶」が何なのか分かりません。

当初は地球環境の保護などが「良い記憶」だと考えられていましたが、最終的に辿り着いた答えが「未来を切り開く意志(つまり人類の繁栄)」です。

たとえ母なる星を喰い滅ぼしてでも人類の未来を切り開く。そうした人類の行いを、母なる星は受け入れると言っているのです。

 

 

 

まとめ

天使の告発については以上です。

最後に圧倒的な生の肯定という答えを与えました。

近年の流れは違うようですが、いずれ物語はこういう方向に進んでいくんだろうと思います。(そう願っています)

しかし、生の肯定も無条件に存在するものではないでしょう。『Rewrite』のことも含めて考えるべきことは多くあるように思いますが、それはまた別の話。 

*1:この単語自体は2巻が初出か。ただ、内容的には1巻の最後の方で触れられている。

*2:厳密に言えば、天使の問いに正面から答えた上で人類が勝利するルートがない、ということです

*3:これはあくまでも僕の理解です。因みに、『物語の物語1巻』にはもう少ししっかりと善悪逆転について述べられています。

*4:『物語の物語』では、このことを指して「究極の悪」と言っているような節もあります。

*5:悪ではない=善なのか、という問題が発生しますが、これは足を突っ込むと面倒なことになりそうなので、取り敢えずyesということにしておきます。

*6:勿論、自ら手を下さず、人類に「自滅しろ」と促すことは可能でしょう。天使の告発をするだけで人類を滅ぼさなければいいのですから。

しかしそれなら、人類にもわざわざ天使を倒す必要は無いように思われます。